2010年1月1日金曜日

本を読んで:アンブロークンアロー 戦闘妖精雪風

アンブロークンアロー 戦闘妖精雪風。
神林長平氏著のこの本だけは必ずブログに感想を書こうと
心に誓っていました。

ただ、あらすじを書くには余りにも複雑且つ難解で、
私の稚拙な表現ではすごさを十分には伝えられないと思います。
それでも、この結論は、この想いは、書かずにはいられません。
なぜならその想いの言葉が私の心の決心となったのですから。
鬱であった私に、そうではない、生きるということはこういうことなんだ、
と判らせてもらったのです。

もし興味をもたれた人は、ぜひ読んでみて欲しいです。

ちなみに戦闘機ものですが、迫力あるドッグファイトシーンは
数ページしかありません。しかしすごい濃密ですが。
そこを期待しないほうが良いです。

あらすじですが、今回は舞台となる、地球と異なる惑星フェアリーと
地球を結ぶ超空間トンネル「通路」をトリックとし、
フェアリーで戦う地球軍FAF(フェアリーエアフォース)、
その情報軍にいるロンバート大佐が敵である地球外知性体ジャムと結託し、
地球に対し宣戦布告をする手紙を、
地球に居る地球人、ジャーナリストであるリン・ジャクスンに送るところから始まります。
(地球人と書いたのは、彼女が国家、民族、宗教、政治等に対して客観的であり、
それらを越えて唯一ジャムの脅威を世界に伝えている人間だからです。)

そして物語はロンバート大佐を中心に、主人公である深井零と彼の所属する
特殊戦を巻き込み、不可思議な感覚の空間に放り込まれるという展開になります。

どう不可思議化というと、人間は本来、五感から加工された情報を脳は受け取るのですが、
(ここは最新脳科学で既に提唱されています。池谷祐二氏著の本で紹介されています。)
この空間では、加工されないリアルな情報が脳に飛び込んでくるのです。
そしてその情報の受け手は深井零だけでなく、彼の愛機、戦闘知性体である雪風にも
同時に伝わるのです。
逆に言うと、深井零の行動が雪風の望む行動、情報収集になる空間とでもいうのでしょうか。

その中で零は自分の周りの人間を知ることになります。
今まで彼がしたことのなかった行動です。
(なぜなら、今までは彼にとって「そんなことはどうでもいい」ことだったのです。)
それは上司であるクーリィ准将と友人であるブッカー少佐の二人でした。
同時にそれは雪風が自分の周りの人間が見方か敵かを知ることでもありました。
結果、零は他人を知らなかった自分を知り、そして興味と関係があるからこそ
その人たちを味方であり信頼し、そのうえで「そんなことはどうでもいい」
と言えたのだと気づきます。

そして気づくと、彼は相棒である桂城少尉とともに雪風で飛んでおり、
ロンバート大佐を追い詰めている状態になります。
ロンバート大佐はこのリアル空間を利用し、通路の向こう側を
量子論的に自分の都合の良い世界、リアル感覚の地球にしようとします。
雪風は今までそれを防いでいたのです。
零はそのことに気づき、今度は自分の力で量子論的に通路の向こう側をあるべき世界、
つまり普通に人間が感じる地球にしようとします。
いままで「そんなことはどうでもいい」と言えたのは更に通路の向こう側がそういった
地球であったから、そういう世界があったからそう言えたのだと気づいたのです。
リアル感覚の地球は言うなれば雪風やジャムが感じる、機械的に認知された地球なのです。
それは普通の人間には耐え難い感覚です。
ロンバート大佐は先天的脳の欠陥により、つねにリアル感覚で生きていたのです。
そして彼は人間として運命を切り開くよりもジャムとして超人的な感覚で生きることを選んだのです。
対し零は、人間として雪風に依存するのではなく人間として最高の性能を発揮し、量子論的な運命を
人間の手で切り開いていく決心をします。

そしてクライマックスは、雪風=零+桂城 vs ロンバート大佐のどっちが先に通路に飛び込むかの
レースとなります。
その瞬間、零はこう思います。
俺は人間だ、これが人間だ、わかったか、ジャム。と…。


私が自分の鬱病を否定出来たのは、実はこの言葉だったのです。
この言葉の想いには自分の人生を自分で切り開く覚悟が必要だと理解し、私も決心をしました。
「自分の人生を自分で生きる」と。
これは普通の人には当たり前のことです。
ですが、今までの私にはこれが出来なかったのです。
人に心配させないように繕うだけの生き方でした。
思えば親孝行の為と思い込んで安定した会社に入り、そこで流されて自分のすべきことをせず
本当はやりたい事があるのにそれを見なかった自分。
今になってその自分に気付き、そのことを亡き両親に話すことも出来ず、
とても親不孝なことをしてしまったと今では思っています。

だからせめてこれからは、自分の人生をよく考えてすべきことをして生きていきたいと思っています。

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